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【産経抄】1月26日
このニュースのトピックス:鳥インフルエンザ
志賀直哉の『流行感冒』は1918(大正7)年から翌年にかけ、世界的に大流行した「スペイン風邪」を描いている。感冒の流行を知った「私」は何としても自家に入れない方法を考える。小学校の運動会には誰も行かせないという徹底ぶりだった。
▼何しろ日本だけでも2500万人が罹患(りかん)し、38万人以上が亡くなるという猛威を振るった。それでいて、当時まだ病原体の正体がはっきりせず、予防のしようもなかった。とあって、今よりもはるかに不気味な病気として恐れられたのは無理もなかった。
▼正体がインフルエンザウイルスであることがわかった後も、人類はこれを克服できない。ウイルスが短い期間で変異し、ワクチンが効かなくなるからだ。鳥インフルエンザが人に感染しやすく変異した新型ウイルスが発生すれば、スペイン風邪以上の被害がでる恐れもあるという。
▼そんな折、新聞の見出しに「ウイルス」の文字が躍りギクッとさせられた。だがこちらはコンピューターウイルスのことだった。ひそかに作成した大阪の大学院生らが初めて逮捕された。一般にはわかりにくい「ウイルスの闇」にようやくメスが入るようだ。
▼強いて言いかえると「パソコンの情報を消すなどの被害を与える不正なプログラム」だが、ウイルスという命名はまことに見事だ。まるで空気のように入りこみ、しかも変異を繰り返す。予防や退治が難しいことがインフルエンザのウイルスとそっくりだからである。
▼ウイルスを作成していた24歳の大学院生はまじめで面倒見の良い研究者だった。研究室でパソコンを扱うことも少なかったという。深夜、自室でこの厄介者を「増殖」させていたのだろうか。ウイルスそのもののように不気味である。