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口腔ケアで高齢者の肺炎予防 歯科医らが施設訪問/食後のうがいで細菌減少
要介護高齢者の直接死因の3割を占めるといわれる誤嚥(ごえん)性肺炎。予防に口腔(こうくう)ケアの重要性が指摘されているものの、介護施設などに歯科医や歯科衛生士が出向いて口腔ケアを行っている実例はまだ多くない。それでも定期的に口腔ケアを行っている施設では、肺炎患者が減っているという報告もあり、取り組みの広がりが期待されている。(平沢裕子)
誤嚥性肺炎は、本来なら気管に入ってはいけない食べ物などが、誤って気管に入り込むことで起こる肺炎のこと。高齢者では歯周疾患など口腔内の細菌が入って発病する症例が多く、特に風邪などで体調を崩しやすいこれからの季節は注意が必要だ。
要介護高齢者約20人が入居するグループホーム「ライフハウス日ノ出」(横浜市中区)では、1年前から週に1度、歯科医と歯科衛生士が訪問、入居者の口腔ケアに取り組んでいる。1人につき約30分、歯や歯茎に問題はないか、口臭はないかなどを丁寧に調べたうえで、歯垢(しこう)を取り除くなどの口腔ケアを行う。
要介護高齢者施設では、年間で1、2割の入居者が肺炎で入院することは珍しいことではないが、同ホームではこの1年、肺炎で入院した入居者は皆無だったという。
酒井智恵子施設長は「肺炎の予防効果があったかどうかはわかりませんが、毎週歯医者さんに診てもらうのを入居者も楽しみにしています。スタッフの意識も高まり、毎日の口腔ケアに熱心に取り組むようになった。なによりみんなが食事をおいしく食べることができるのはいいこと」と話す。
平成11年から歯科医らの施設訪問を手助けしてきたペガサスコーポレーション(横浜市中区)の兼田憲明代表は「定期的な口腔ケアを行うことで、口腔がんの早期発見につながったケースもあった。肺炎をゼロにすることはできないが、この8年の活動でかなり効果があることは実感している」と評価する。
ただ「口腔ケアで大事なのは毎日の取り組み。そのためには施設スタッフの理解と協力が不可欠」とも指摘する。
要介護高齢者で口腔ケアをきちんと行った人と行わなかった人を2年間にわたり調べたところ、行った人の肺炎の発症率が明らかに低いという調査結果もあり、高齢者の肺炎予防としての口腔ケアはもはや常識にもなっている。
平成18年4月から、口腔ケアが介護予防サービスとして介護保険に導入された。ただ、サービスを利用している人はそれほど多くないのが実情だ。
また、要介護高齢者の中には、障害のため自分の意思を表現できない人も多く、ケアを行う歯科医や歯科衛生士の技量が問われる面もある。
神奈川歯科大顎(がく)顔面外科学講座の高木忍助教は「口の中は、温度や湿度、栄養などの面で細菌が繁殖しやすい条件がそろっている。細菌を完全になくすことはできないが、数を減らすことで肺炎は確実に予防できる。高齢者の中には、認知症や障害がありうまく口腔ケアができない人も少なくないが、食後にうがいをするだけでも細菌を減らす効果はある。肺炎予防のためにも毎日のケアに力を入れてほしい」と話している。

