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【五輪の中国】破壊される歴史と伝統 (2/2ページ)
第2の「顔」は、保存・整理される胡同の街並み。老朽化した四合院を改築し、五輪の観光客を意識して見栄えのいい姿にした。五輪を前に、数千万元(1元=約15円)という高値で売買され、化粧直しされた四合院も少なくない。中には、日本円にして14億円という超高額物件も登場。外国人観光客を見込んで、ホテルやレストランに様変わりする四合院もある。
最後の「顔」は、憤る住人だ。その「顔」を代表する一人が、元弁護士の女性、倪玉蘭さん(47)だろう。チョウが舞う見事な四合院に住んでいた倪さんは、立ち退きを拒み続けている。周辺住民はほとんど姿を消し、辺りはがれきの山だ。
2001年に業者から提示された立ち退き料は、1平方メートルにつき6800元。当時、それでは地価高騰が激しい北京市街には住めなかった。その立ち退き料は最近になって、3倍近い2万元に跳ね上がった。
それでも「立ち退く気はありません」と倪さんは話す。家の周辺では、家主が仕事から帰宅すると、すでに家が取り壊され更地になっていたケースもあった。弁護士資格を剥奪(はくだつ)された今も「平和の祭典を口実に、どれだけの市民が地獄に突き落とされたか。横暴なやり方を許さない」という思いに変わりはない。
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子供たちがボール遊びをしていた前門地区の胡同。その中心部も開発の対象となり、昨年11月、最後まで抵抗していた住民の家が取り壊された。
倪さんは「重要なのは自らの歴史と伝統文化を大切にすることだ。五輪を契機に北京が摩天楼ばかりがそびえる都市になって後悔しても遅い」と言う。
しかし、変貌(へんぼう)した北京はもう戻らない。
(北京 野口東秀)
=第1部おわり
■胡同
北京の歴史ある路地、横町。数千の胡同が故宮の周囲に巡らされ、大部分は元、明、清の時代にでき、皇族の邸宅などが集中した。新中国成立時に約3000、1900年代まで1300あったとされるが、現在は都市開発で600〜700にまで減少したといわれる。胡同を象徴する四合院は、私有物件が約3000、公的機関所有のものを含めると約1万6000(不動産業者)。