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【産経抄】11月5日
時代の寵児(ちょうじ)が転落していくさまをじっくり見るのは人々にとって何よりの娯楽かもしれない。被害額は5億円と多いが、単純な?詐欺事件の取材に小紙を含めたメディアが殺到し、大きく扱ったのも容疑者が一時代を築いた音楽プロデューサーだからだ。
▼絶頂期には年12億円近く税金を納め、ロサンゼルスやハワイの豪邸も手に入れた。2000万円でファーストクラスを借り切って海外旅行を楽しみ、女性にもてもてだった成功者が、検察のご厄介になったのだからテレビの2時間ドラマもびっくりの展開だ。
▼逮捕された小室哲哉容疑者が、世に送り出したミリオンセラーは20曲にものぼる。ヒット曲はバブルの余韻が残る1990年代半ばに集中し、題名も「恋(いと)しさとせつなさと心強さと」以外は「CAN YOU CELEBRATE?」など英単語を並べた植民地風のものばかりだった。
▼音楽の神様は移り気で、2000年の沖縄サミットで政府から依頼されたイメージソングをつくったときには峠を越えていた。最近はヒット曲に恵まれず、事業にも失敗したが、本人の浪費癖は直らなかったようだ。
▼それでも彼がプロデュースし、安室奈美恵さんらが歌った数多くの曲が、90年代の気分にぴったりとあっていたのも確かだ。阪神大震災の被災地でも小室サウンドはラジオからよく流れていた。自業自得とはいえ、これらの歌が色眼鏡でみられるのはなんとも悲しい。
▼救いは小室容疑者が潔く罪を認めていることだ。カネ儲(もう)け優先の曲づくりで枯れ果ててしまった才能が、色と欲にまみれた芸能界から強制的に切り離されることで再生する可能性だってある。そのためにはまず、迷惑をかけた人々やファンに心から謝るのが先決だろう。
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