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【人、瞬間(ひととき)】あの言葉 バイオリニスト・千住真理子さん(下) (1/2ページ)
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父、鎮雄(元慶応大学教授、故人)は3人の子供たちにとって、精神的にとても厳しい人だった。自分自身にも厳しいが、子供たちに課す“ハードル”もまた高い。困難な課題を与え、「精いっぱい努力すること」を求めた。それは息子でも、娘でもまったく変わることがなかった。
「父のことが怖くて、中学、高校時代までは面と向かって話もできなかったぐらい。友達が、『ウチのパパがねぇ』なんて甘えているのを聞くと、とてもうらやましく思ったものです」
幼い日、音楽コンクールに出るか、出ないかと迷っていたとき、「人生にはカギを開けねばならないときがある」と言って背中を押してくれた父は、こうも言った。「(コンクールで)勝ち負けは問題ではない。コンクールは自分を磨く場であり、自分がいいと思った音楽をやればいい。他人(ひと)と争うのは止めなさい」と。「だれだれさんはこうしている」などと口にしようものなら、激しく怒られた。
だが、当時の千住には、それが“きれい事”にしか聞こえない。コンクールは勝たねば意味がないではないか。それなのに…。2人の兄も千住と同じ意見。父の言葉に反発を覚えた。

