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【街物語】恩師が語るサザンオールスターズ誕生の秘話 (2/3ページ)
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サザンビーチほど近くの小さなパン屋「清月」には、全国からファンが足を運ぶ。「愛知だとか、よくもまあ遠くから。人気がすごいのよ」。店主の高橋ツナ子(73)は笑う。
桑田が中学時代、野球部の練習後に毎日立ち寄り、店先でパンをほうばっていった。顔を出すのはいつも夕方。総菜パンは売り切れて残っていないため、高橋は余ったソーセージなどを挟んで「オリジナル」を作ってあげた。今では「清月スペシャルサザン佳祐ドッグ」と名を変え、店一番の人気商品だ。
母親が不在がちだった桑田にとって、高橋は母代わり。当時から「ケースケ」と呼んでいた。メンバーの原由子と結婚してすぐ、2人であいさつにやってきた。今でもコンサートの招待チケットが届く。
「本当はね。ひざが痛くて、昨年いっぱいで店を畳もうと思って…」
だが、どこからうわさを聞いてか、昨年3月、桑田から手紙が届いた。
《おばちゃん、ごぶさたしてます》
便箋(びんせん)5枚にしたためた、たわいのない話。最後にこうあった。
《なんとか頑張って、清月の灯を消さないようにできますか》
ふと、あのころの光景が思い浮かぶ。パンを腹におさめると、桑田は決まって店の前の道路にあぐらをかいた。そして、当時流行っていた西部劇「ローハイド」のテーマ曲を大声で歌い始める。革靴を脱いで両手に持って、リズミカルに地面をたたく。
「おいケースケ、車にひかれて死んじゃうぞ」
小言を言っても歌い続けた、憎めない少年が、いつしかその歌でスターになった。それでも昔通ったパン屋を忘れず、気遣いの手紙をよこしてくる。
読み終えて、ひとしきり泣いた。「もうちょっと、頑張ってみよう」
きょうも店には明かりがともり、ファンがふらりとやってくる。




