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【酒とジャズの日々】名演案内 ビリー・ホリデイ「ソリチュード」
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「君はキャメロン・ディアスに似ている」
20代後半のカップルだった。酒の力を少しばかり借りて、男は女を口説きにかかったようだ。
「マスター、キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』をお願いします」
男の選択に思わず口に含んだオールド・クロウを噴き出しそうになった。女を口説くときに『ケルン・コンサート』とは、あまりにベタな選択…。
店内の空気がロマンチックな雰囲気に変わり、男は左手を女の右手に重ねた。
「いい曲ね。この曲の楽譜ってあるのかしら」
「ネットで探せばきっと見つかると思うよ」
思わず会話に割り込みたくなる。「この演奏はすべてが即興なんだよ」と。
ふたりが店を出るや「気分を変えましょう」とマスターはビリー・ホリデイの『ソリチュード』(1952年録音)をかけた。8曲目の表題曲がいい。酒と麻薬と不摂生で声の衰え始めたホリデイの歌が心にヒリヒリとしみる。胸が痛い。
「オレたちはひねくれているのかね」と問うと、マスターはきっぱりと言った。「いや、若さに嫉妬しているだけですよ。でもあのふたりには、この曲の良さは当分わからないと思いますね」(桑原聡)

