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【酒とジャズの日々】名演案内 カーメン・マクレエ
■「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」
店に入ると、エリック・ドルフィーのライブアルバム『アット・ザ・ファイヴ・スポット』第1集が流れていた。
マスターは目をつぶり聴き入っている。客がだれもいないとき、マスターは決まって自分のためにドルフィーをかける。
「取りあえず」とギネスを注文する。
「このライブには居合わせてみたかったですね。そんなライブアルバムってありますか」。グラスとビールを差し出しながらマスターは言った。
「もちろん。新宿のジャズバー『ダグ』で録音されたアルバム。確か1973年だったと思う。何だか分かりますか」
マスターは自信たっぷりに答えた。「カーメン・マクレエでしょう」
『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』は、全編がカーメンのピアノ弾き語り。彼女は冒頭のタイトル曲をヴァースから歌い始める。映画「カサブランカ」で有名になったものの、実質は小唄にすぎない曲を、ここまで豊かに表現した歌手は他にいないと思う。
タイトル曲が流れ出す。
ビールグラスをマスターの前に掲げ「君の瞳に乾杯」と言う。「照れるじゃないですか」とマスターは顔を赤らめた。(桑原聡)

