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【酒とジャズの日々】名演案内 「枯葉」ウイントン・ケリー
ジャズバー「G」の扉を押すと、酒棚の上にぽつんとサントリーホワイトが立っているのが目に入った。
「どうしたの、あれ?」
「懐かしいかと思って。この店のお客さんの世代なら、学生時代はホワイトでしょう」とマスター。
そう、30年前の学生にとって、ほどよいぜいたくが白。友人の汚いアパートで白のロックを飲みながらよく聴いたのがウイントン・ケリーの『枯葉』(1961年録音)だった。
水滴が蓮の葉の上を転がるようなケリーのピアノのタッチがとても心地よい。深みはさほどないけれど、ジャズという音楽の楽しみを最初に教えてくれたのがこのアルバムだった。
白をロックで頼み、『枯葉』をリクエストする。3曲目の《枯葉》が流れ始めると、ひとつおいて隣りの男性客が「私にも白をロックで」と注文し、「《枯葉》には名演が多いけれど、これが一番好きですよ」と話しかけてきた。
「学生時代はやはり白でしたか」。そう尋ねると、「レッドをコーラで割ってましたよ」
「少しだけ先輩ですね」
「定年までカウントダウンですよ。人生って早すぎるね。いまや枝から落ちそうな枯葉だもの」。先輩はそう言って白を勢いよく空けた。(桑原聡)

