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【ステージ随想 客席から】新国立劇場「魔弾の射手」 伝統の中に斬新なアイデア
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ウェーバーの「魔弾の射手」はドイツ・ロマン派好きにはたまらない魅力作だが、めったに上演されない。東京・初台の新国立劇場にも初めての登場だが、これが実に見事だった。このオペラを心から堪能した。
最大の功労者は演出のマティアス・フォン・シュテークマン。いま流行のひとりよがりな舞台かと危惧(きぐ)していたのだが、伝統の中に斬新なアイデアをちりばめた秀作。冒頭の農民たちの衣装からして中世のボヘミアの雰囲気満点。そうかと思うと狼谷の場面では「ハリー・ポッター」のような巨大な毒グモの群れが舞台を気味悪くはいまわる。
第2の功労者は指揮のダン・エッティンガー。序曲のホルン四重奏から内声や低音を強く吹かせ、音を割り、きれいごとでない音色とハーモニーを聴かせる。つづく農民たちのコーラスの土の匂(にお)いがする大迫力や、マックスを嘲笑(ちょうしょう)する下品な音色、それが宗教的な音楽では柔らかい荘重さに変わる。つまり表現の幅が著しく広いのだ。合唱団にも大拍手。第3幕の4人の乙女たちの重唱では、不安な歌詞が出る3番で、オーケストラ伴奏に汚いひびきを出させるなど、大胆で個性的な改変をする勇気もすばらしい。
歌手では隠者の妻屋秀和がベストで、最後を立派にしめくくった。他の主役たちも水準に達しており、十分に満足。沢田祐二の照明はバラエティーに富み、壁に映る人影を最大限に利用して効果を上げていた。これも演出家の力であろう。(音楽評論家 宇野功芳)

