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【酒とジャズの日々】名演案内 「ミスティ」山本剛 (1/2ページ)
ほかの客がリクエストしたエロール・ガーナーの『ミスティ』を少しばかりイライラしながら聴いていた。
「甘ったるいカクテル」と胸の内でつぶやき、ワイルド・ターキーのロックをなめる。
タイトル曲の《ミスティ》はスタンダードの中でも屈指の美しく端正な曲想を持つ。ピアニストのガーナーが飛行機の窓から見た霧に包まれた街にインスパイアされて書いた。残念ながらガーナーの演奏は手数が多すぎて、端正さをぶち壊していると思う。
ジャズバー「G」にはマスターの作ったオキテがある。そのひとつが「リクエストは流れを読んだうえで」というものだ。リクエストを考えあぐねていると、「たまには甘いカクテルでもどうですか」とマスターの声。「いや、同じものを」と突っぱねる。マスターはニコリとして「《ミスティ》の聴き比べでもしましょうか」と、山本剛の『ミスティ』を取り出した。1974年、東京・六本木のジャズクラブ「ミスティ」で録音されたものだ。