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【ステージ随想 客席から】バッハ・コレギウム・ジャパン「マタイ受難曲」
このニュースのトピックス:クラシック
毎年、受難節にバッハの受難曲を演奏している鈴木雅明とバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)。今年は「マタイ受難曲」で、20日の彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール(さいたま市)には、至高のバッハ演奏が響いた。筆者の接した彼らの「マタイ」の中でも、この日の演奏は文句なく最高の充実を示していた。
演奏の生命力と多彩なニュアンスは、何よりも音楽家としての鈴木の成熟が反映されたものだ。コーラスのメンバーも、柏原奈穂や鈴木准といった若手実力派ソリストも加えた強力な布陣だが、それが、ひたすらに鈴木の指揮下、バッハの音楽の美の真実に迫ろうとする姿勢は美しい。
今回の彼らの演奏の中でも特筆すべきは各コラール(賛美歌)の緻密(ちみつ)なニュアンスの表出であった。今までの彼らの演奏では比較的に“弱い”部分であったコラールは、豊かで自在な表情を獲得し、深い民衆の祈りを生み出していた。
ソリストではソプラノのハナ・ブラシコバの美しさが心に残る。エバンゲリスト(福音書記者)のヤン・コボウも熱唱。多彩な音色を駆使した歌唱であったが、時に自らののどの限界を超えた歌い方はいささか気になる。
この日のもうひとつの喜びは、彩の国さいたま芸術劇場という小さな空間の中で、この名演を味わえたことであった。(音楽評論家 國土潤一)

