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【ステージ随想 客席から】新国立劇場 オペラ「黒船」
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■日本の美感に根ざした美しさ
昨年秋から新国立劇場オペラ部門の芸術監督をつとめる若杉弘が、就任後、初めてタクトをとった。演目は日本人の手になる初のグランド・オペラともいうべき山田耕筰の「黒船」。初演以来序景のカットが通例となっていたが、今回は作品の全容を明らかにするためノーカットで上演された(2月22日、東京・初台の新国立場)。
日米の関係悪化が顕著な情勢下で、昭和15年の皇紀2600年祝典に向けて作曲された作品だが、安政時代の下田を舞台とした物語は「唐人お吉」にちなんだもの。それを理想化し、日米の確執を克服、友好な関係の構築を暗示して終わる。アメリカのジャーナリストで知日家だったノエルの原作というのも意義深い。日米関係が頻繁に話題に上る今日において、この作品が持つ意味を考えるのも有意義だろう。
山田の音楽はドイツの後期ロマン派の影響を受けながらも、洋楽の旋律に乗せにくい日本語の扱いに独自の巧みさを発揮したもの。それ以降の邦人作品でもこの作品を超えたものは数少ないだろう。そうした作品の特徴を若杉は丹念に描き出す。やや淡彩に傾きがちなところがあるとはいえ、作品の全体像を明らかにした意義は大きい。それは奇をてらうことなく、日本の美感に根ざした美しい舞台でみせた栗山昌良の演出についてもいえるだろう。
初日の22日にお吉を演じた釜洞祐子は濃(こま)やかな表情付けによって主人公を好演、吉田役の星野淳も一本気な浪人の姿を演じあげた。東京交響楽団の柔軟な表現力も光る。(音楽評論家 岡本稔)

