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【音楽水先案内】気位高いバイオリン奏者

2008.1.13 17:42
このニュースのトピックスクラシック

 オーケストラの要は、なんといってもバイオリンセクションだ。

 近代オーケストラの発達してきた古典派とロマン派の時代は弦が中心だった。扇状に広がるオーケストラの左翼のいちばん手前に位置し、欧米ではオーケストラのなかの「エリート」と自任しているらしい。現代音楽では管楽器や打楽器が優勢になってきているが、それでも人数はいちばん多いし、第1バイオリンのトップがコンサートマスターになる伝統も異論なく受け入れられてきている。

 第1バイオリンにはソリストを目指した人たちが多い上、作曲家を自任している人も少なくない。作曲家ではだれが好きですかと聞かれると、「わたし自身が作曲家です!」と胸を張ったりする。

 ある名門オーケストラのバイオリン奏者で、作曲の筆もとる人が、著名指揮者の自作自演に付き合わされたときのこと、なんでこんな指揮者のくだらない曲を演奏しなければならないのか! 悔しさと屈辱感に駆られて自分の高価なバイオリンを楽譜立てにぶつけてこなごなにしてしまったという話もある。それほど気位が高いのが第1バイオリン奏者である。

 バイオリン協奏曲の演奏のとき、ソリストの弦が切れたりすると、コンサートマスターは自分のバイオリンをさっと提供し、自分は横にいる奏者の楽器を借り、その奏者は後ろの奏者から譲り受け、貸し借りの連鎖がつづく。そのときの複雑な心中は察するにあまりある。

 (ドイツ文学者・音楽評論家・喜多尾道冬)

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