今年で歌手デビュー10周年を迎える歌姫の9作目のアルバム。発表直後、突発性内耳障害のため左耳が機能していないことをファンクラブのサイトで告白した。その不安は、いかばかりか。恐怖心は計り知れないが、この作品で彼女は心の闇をも歌へのエネルギーに変えている。冒頭の曲から現実を直視するかのような重い歌詞が迫ってくるが、漂うのは失望感よりも力強さ。しんのある歌声が響いてくる。歌詞は全曲自作。英単語はほとんど使わない。横文字で繕わず、満たされない恋心や刹那(せつな)的な心情をまっすぐつづったフレーズが印象的だ。終盤、曲調は明るくなる。前へと踏み出そうとする姿勢に、聴き手も救われた気持ちになる。(安)