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【話の肖像画】タクトと鍵盤と人生と(2)ダニエル・バレンボイムさん
□世界文化賞受賞指揮者・ピアニスト
■弾き振りは本当の指揮者にだけ
《陽光きらめく初夏のベルリン・フィル内のホワイエ。ちょうどアスパラガスがおいしいシーズンで、巷(ちまた)のレストランでも、アスパラを使ったコースが人気だ。しかし、そんなのどかな雰囲気は、バレンボイム氏には似合わない。この日の取材も、リハーサルの合間の、30分程度の時間しかなかった》
−−ピアノと指揮の両方を続けていますね
バレンボイム そうです。ピアノやバイオリンは、音楽的勘を使うことができます。それは、自分と楽器だけの関係だからです。しかし、指揮で100人のコミュニケーションをとるには、それぞれの(楽器や音、人の)知識が必要となり、さらに、それらをジェスチャーでオーケストラ全体に伝えなければなりません。お気づきかもしれませんが、音楽を表現するのに、音と物理的接触がない唯一の音楽家は指揮者です。だから、指揮者は知識と技術を高めることで、初めてオーケストラを自在に動かすことができるのです。私は、音を生み出す経験を指揮に生かし、音に耳を傾ける経験をピアノ演奏に生かします。相乗効果はあるのでしょう。
−−弾き振り(ピアノを弾きながら指揮をする)は好まれますか?
バレンボイム これは、本当の指揮者にしかできません(笑い)。しかも、指揮者だけでなく、音に耳を傾けるのに慣れたオーケストラでないと難しいでしょう。
《その言葉どおり、70年代からパリ管弦楽団、シカゴ交響楽団、ベルリン国立歌劇場で音楽監督などを歴任する》
−−優秀な人だけでなく、優秀なオーケストラとの出合いも大きかったようです
バレンボイム 私が初めて大きな責任を感じたのは、65年からかかわったイギリス室内管弦楽団でした。小編成で18世紀の音楽を演奏し始めたころです。当時はベルリン・フィルやウィーン・フィルが12〜14人の第1バイオリンでモーツァルトを奏でていた時代。小編成は新しい動きで、とても面白い時期でした。初めてピアノの弾き振りをしたのもこのころでモーツァルトのピアノ協奏曲の全曲演奏などに挑みました。
−−そして、パリへ
バレンボイム はい、74年にパリ管弦楽団に迎えられました。そのとき、興味をそそられたのは、楽団が不ぞろいだったからです。ヨーロッパを代表する演奏家もいましたが、かなり不ぞろい! 彼らのレベルをいかに上げ、また均質化をもたらすか、面白い試みが始まりました。(福本剛)

