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【サブカルさーふぃん】マンガ 「3月のライオン」

2008.6.28 08:20
このニュースのトピックスサブカルさーふぃん

 ■輝く場所に生きる厳しさ

 羽海野(うみの)チカの『3月のライオン』(白泉社)を読んで思い出した。彼女のヒット作『ハチミツとクローバー』には、ちまたで言われるような「ハートウォーミングな純愛物語」という側面のほか、「才能を持つ若者の不安」という命題が描かれていたことを。

 『ハチミツとクローバー』は「絵を描く」という意味では作者と通じる美術大学の学生たちの群像劇だった。一方で、『3月のライオン』ではプロの将棋の世界を描いている。

 少年棋士として早くから認められてきた主人公は、普通の男子高校生とは違い、熾烈(しれつ)な対戦を勝ち残ってきた。それは、周囲に優越感を持つ−などというレベルでは表現できない。いつ自分がその座を奪われるかもしれないという「生存権」にかかわる切実さがある。そう。ここでは「勝ち組」の不安が描かれているのだ。

 一方で、少年の対極に、彼を「無条件」に受け入れているかのように見える、猫に囲まれた姉妹の生活が描かれている。それはまるで昭和30年代の人々の暮らしのように温かい。作者は意図的に両者を分離し、交差させる。そして能力だけでは測れない、人と人とのきずなをも浮き彫りにする。そこに、作者の凛(りん)とした姿勢が示されている。どんなに光り輝くように見える場所にも厳しさがあるのだ。(評論家 切通理作)

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