ニュース: エンタメ RSS feed
【サブカルさーふぃん】マンガ 『盆堀さん』「無限の夢」などない
このニュースのトピックス:サブカルさーふぃん
いましろたかしの漫画はいわば“ダウナー系”である。主人公はがんばらない。モテない。釣りが趣味でも、たいした収穫があるわけでもない。そのわりに釣果にこだわり、のんびりすることもできない。
最新刊『盆堀さん』の帯にはこう書かれている。「およそ漫画の主人公たりえない人間たちが、ほぼまったく活躍せずに終わる世界」。こんな宣伝文句で売られる漫画を描いているのは、いましろたかしぐらいのものではないだろうか。
いましろ漫画の主人公が、ナゼ「およそ漫画の主人公たりえない人間たち」なのか考えてみる。同じダメ人間でも、極端に不幸だったり、貧しかったりすれば、それは立派に主人公になり得るのではないだろうか。だが彼の描く人物たちは、そうした「エッジの効いた存在」ですらない。
タイトルにもなった盆堀さんは45歳のサラリーマン。バンドが趣味だったが、いまさら仲間とスタジオに入ったところで、かつてあこがれていたミュージシャンに近づけるわけでもない。それより道行く美女の肢体に目を奪われるが、声をかけるわけでもない。いまさら大きな夢を持ったところでしようがない。
だが、そこには通奏低音のような叫びがあるように思える。時代は、メディアは、常に無限の夢をかきたてることで「現在」を消費してきた。だが、そんなものははじめからないのだ。それがありのままの姿なら「絶望」だなどと誰に言わせるものか!と。(評論家・切通理作)

