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【記者ブログ】なつかしの「銀英伝」、中国で堂々出版 福島香織 (3/4ページ)
■さらに、主役のひとり、ヤン・ウェンリーは、明らかに中国人。もう、中国人の自尊心をくすぐる設定なのである。ちなみに、もう一人の主人公はラインハルト・フォン・ローエングラム。金髪、アイスブルーの瞳という宝塚歌劇に登場しそうなゲルマン系美形、という設定である。日本人がつくった物語なのに、日本人があまりでてこない。ヤンの引き立て役のムライ中将ぐらいか??
■しかし、中国の若者を夢中にさせる理由はこれだけではない。
この作品は、銀河帝国軍の「常勝の天才」ラインハルトと、自由惑星同盟(反乱軍)の「無敗の名将」ヤン・ウェンリーの2人の英雄の闘い(戦略、戦術上の頭脳戦)を主軸にしつつ、100人以上は出てくる登場人物とその緻密な造形と心理描写、エピソードなど長編物語の醍醐味をすべて備えつつ、かつ、歴史観、専制と民主の相克、経済、イデオロギー、宗教、戦争の本質に関する分析、考察などが、ジュブナイルと侮れないほど深い。クラウゼヴィッツの「戦争論」とマキャベリの「君主論」などを手にとるきっかけは、私の場合、正直言って「銀英伝」であった。
ちなみに、私は陰気な風貌、陰険な性格で目的のためなら手段を選ばぬ冷徹さながら、私欲ゼロのマキャベリスト、オーベルシュタインが登場人物の中で一番気にいっている。写真の平積み本の右端の本表紙のイラストが、そのオーベルシュタイン。
■だから、中国では、銀英伝をして「謀略小説」「政治教科書」との評もあるのだ。中国SF作家・星河の銀英伝論評「写実の伝説」にこうある。
■(前略)
「銀英伝」を読む前に、ある人は私にこういった。「この物語は謀略を体現している」。だが私が一番印象に残ったのは経済の要素だった。これまでの多くのスターウォーズ系のSF小説が考慮しなかった部分だ。(中略)田中芳樹は社会の各階層に夢中になっている。とくに上層階層の駆け引き、だましあい、軋轢、複雑な人間関係の錯綜を描くことに熱心で、意図せずして、簡略版の政治教科書となっている。