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【新春対談(上)】歌舞伎俳優・坂田藤十郎さん×作家・林真理子さん (2/4ページ)
林 大人になってからです。日本舞踊を始めると、歌舞伎を観ていても、それまでの100倍楽しくなりました。せりふが洗練されていて日本語の豊穣(ほうじょう)さに酔う、というのが一番の楽しみじゃないでしょうか。それを名優が演じてくださるので胸に響く。
藤十郎 ありがたいことをおっしゃる。
林 歌舞伎は公演時間が5時間、とか長いでしょう。だから浮世を忘れて、違う世界につれて行ってもらった、という感じがします。歌舞伎時間に身を委ねるというのは大事なんじゃないでしょうか。
藤十郎 昔はもっと長かったんですよ。大阪の道頓堀には芝居茶屋がたくさんあってお弁当を客席まで運んでくれたりね。情緒がありました。お客さんも嫌いな役者が出てくると後ろを向いてお弁当を食べたり。先輩方から「お客さんの箸を止めて舞台を向かせる芝居をしないといけない」と言われたものです。
−−閉塞(へいそく)感のある今の日本だからこそ、伝統の上に培われたそういう時間が必要なのかもしれませんね。
林 私はこの不況、いい意味で日本人が内に向かう機会になると思っています。歌舞伎を見に行ったり、本を読んだりして内にエネルギーをためこむ。そして来るべき時、外に向かって発散する。日本人がそれぞれ、自分の内面と向き合うことは日本の将来のために無駄じゃないと思います。
藤十郎 私は海外に歌舞伎を紹介できる機会をもっと作ることができればと思っています。外国の方は歌舞伎をちゃんと理解してくださる。最近、主宰する「近松座」で海外公演に行く機会が多いのですが、どこでも歌舞伎の本質、作品のテーマに感動してくださる。日本が世界で果たすべき役割を考えたとき、伝統に裏打ちされたオリジナリティーあふれる文化こそが大きな力になるのではないかと思っているのですよ。
■二、変と不変 現代にないもの求め
−−藤十郎さんが顔見世で演じられた「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」は夫婦の情愛を描いた近松門左衛門の作品です。


