ニュース: エンタメ RSS feed
映画「ヤング@ハート」 老いを超越 コーラスの力
米国の田舎町に平均年齢80歳の男女混声コーラス隊がある。歌の技量は趣味の域を越え、米国内だけでなく世界公演を行うプロのミュージシャンだ。映画「ヤング@ハート」(公開中)はスティーブン・ウォーカー監督が、コーラス隊の厳しい練習風景からツアーを追った迫真のドキュメンタリー。「年齢は関係ない。新たな挑戦に遅すぎるということはない」と教えてくれる渾身作だ。(戸津井康之)
ウォーカー監督は英国ロンドン在住。3年前、妻で映画プロデューサーのサリーさんに誘われ、米国から来たコーラス隊「ヤング@ハート」のロンドン公演を鑑賞する。
「最初は興味をひくための活動ではないかと疑念を持っていました。でも、実際にコーラスを聞いて衝撃を受けた。彼、彼女たちのパワー、歌声の美しさに圧倒された。私が撮るべきテーマがここにあると思った」。約3カ月かけて交渉し説得した末、米国に乗り込み、撮影を開始した。
「ヤング@ハート」は1982年、米国マサチューセッツ州の高齢者向け住宅の住民らによって結成された。以来、地元の定期公演のチケットは即完売、欧州や世界公演を成功させる人気コーラス隊に成長した。
「撮影を通じて私には24人の新しい祖父母ができました」。監督が出会ったメンバーは74歳の男性から最高齢92歳の女性まで。高齢者だからといって練習に甘えはない。公演本番に向けた練習は厳しく、プロの音楽家、ボブ・シルマンさん(54)の指導に一切の妥協はない。公演の度に難しい新曲にも挑む。アップテンポのジェームズ・ブラウンの曲を苦労しながらメンバーが覚えていく姿にはプロの意地がにじみ出る。
公演本番直前にメンバー2人が相次いで亡くなる事実も映画は伝える。励まし合いながら練習してきた仲間はショックを受け落ち込む。監督がメンバーに聞く。「公演は予定通り行いますか。歌えますか?」
女性の1人が言う。「私は歌います。もし、私が亡くなったときもメンバーにはいつも通り、歌ってほしいからね」
本番の会場にコーラス隊の力強い歌声が響き渡る。亡くなった仲間への追悼の魂を込めた叫びの声が…。「体が老いても心まで老け込むことはない。私も80歳が待ち遠しい」。ウォーカー監督は撮影中、こう思ったという。

