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河瀬直美監督の新作「七夜待」 異国の地で新境地
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昨年の監督作「殯(もがり)の森」でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した河瀬直美監督の新作「七夜待(ななよまち)」が公開されている。デビュー作から一貫して生まれ故郷・奈良を舞台に撮り続けてきたが、初めて海外のタイで撮影を敢行。地元タイやフランスのスタッフらと合作体制を組んだ。河瀬監督は「奈良の延長線上にタイがあった」と話す。
《彩子(長谷川京子)は30歳。日本を旅立ちたどり着いたのはタイのバンコク。タクシーでホテルに向かうが、車は人気のない山道へ。不安を覚えた彼女は車を飛び降り、民家へ逃げ込む。家にはタイ人の母子とフランス人青年がいた》
「日本の戦後のような質素なタイに、日本人が忘れた大切なものがある−と感じた。大きなお寺も身近にあり“祈り”が街にあふれている。奈良に通じる世界でした」 河瀬監督はタイを選んだ理由についてこう話す。
フランス人女性カメラマンを撮影監督に、編集、録音にタイ人スタッフを加えるなど初のインターナショナルチームで製作に臨んだが、撮影手法は「従来のスタイル」を通した。細かい設定やセリフを書き込んだ脚本は作らず、俳優には簡単な指示を書いたメモを渡すだけ。
たとえば、長谷川がバンコクに到着し、ホテルに向かう場面では、想定した道と違う路地に入ったことがあった。「それでも構わず撮り続けました」。その結果、スクリーンには監督の意図した通り、タイに単身やって来た女性の不安がリアルに活写される。
「今後も合作を撮りたい。監督として世界観が広がることを実感できますから」。異国に戸惑いながらも活路を切り開いていく主人公と河瀬監督の姿とが重なって見えた。(戸津井康之)

