MSN Japanのニュースサイトへようこそ。ここはニュース記事全文ページです。

ニュース: エンタメ 芸能界マスコミ音楽ゲーム・コミック写真RSS feed

【人、瞬間(ひととき)】あの人 ソプラノ歌手・中丸三千絵さん(47)(上) (2/3ページ)

2008.6.3 07:44
このニュースのトピックス有名人の訃報

                □  □

 まるで誘(いざな)うかのように、闘病中の子供たちのために歌う話が舞い込んできた。世界の舞台を飛び回る多忙な生活の合間に病院を訪ねた。外来ロビーや入院病棟で歌った。許しを得て、手術に立ち会ったこともある。歌を聴いてくれる子供たちは、いったい何と闘っているのか、しっかり見つめたいと思ったからだ。

 「いい音響空間、いい共演者、いい伴奏…そんなものへのこだわりが不思議となくなった。そういうことの前に人間の基本は命だという、当然のことに気づきました」

 眠れないからと睡眠薬を飲むような生活をやめた。トレーナーを探して、身体を鍛え直した。食事もカロリーを計算するように。中2日は休養が必要だったのが、1万人規模のコンサートを3日間ぶっ通しで歌っても平気になった。

 「子供たちのために強く健康でありたい。そして、一日でも長く歌いたい」

 勇気づけるつもりが、励まされていた。いまはそう思う。

                □  □

 訪問先のがん治療施設のひとつで、高校2年生の少女と出会った。熱があったそうだが、「どうしても聴きたい」と担架に乗せられてきた。胸に入れられた管が痛々しかった。小さな公演のあと、「ピアノを弾きたい。もう2年も弾いていない」と言う。皆で抱き起こすと、少女はショパンの夜想曲から「遺作」を見事に弾き切った。

 「弾き終えて、『先生、わたし治ったみたい』と叫んだんです。ピアニストも私も、涙があふれて止まらなかった。忘れられません」

 後に少女の母親から一文を受け取った。「娘は、生きる希望を持って頑張りました」と記されていた。演出ではなく、自分をさらけ出せる歌手であり続けたい−割れたグラスを思いだすたびに、そう思う。

 =敬称略

 文 牛田久美

このニュースの写真

関連トピックス

PR
PR

PR

イザ!SANSPO.COMZAKZAKFuji Sankei BusinessiSANKEI EXPRESS
Copyright 2008 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。