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【話の肖像画】今を生きる新派(4)女優 水谷八重子さん
■時代の風景に同化を
−−新派の一番若い研究生は昭和62年生まれだそうですね。何から学ぶのでしょうか
水谷 必修なのは着物を着られることです。立ち居振る舞いは日舞で覚える。着物がジーパンを履いているのと同じにならないとだめ。ただ、日舞だけを身につけても演技が“踊っちゃって”日常の所作にならないことがありますね。
−−ではどうすれば?
水谷 お芝居はね結局、板(舞台)の数を踏んでなんぼですよ。教室があるわけでも、こうしたらうまくなるという方法もない。最近は、新派の舞台数が減ったので、今の若い人たちはかわいそうですけどね。
−−舞台経験だけでなく勉強も必要ではないのですか
水谷 いえ、まずはお芝居の邪魔をしない、お客さまの気にならないことからです。熱心な子は役の生い立ちや、どういう思いでこの橋を渡るかなどを、一生懸命考えて歩くのですが、そういう演技は逆に目について、「とっとと引っ込め」と言われます。その時代の風景に同化するのが大事です。
−−時代の空気ですか
水谷 ひと昔前でしたら、物売りの声ひとつで、お客さまは季節や時間帯をイメージしてくださった。けれど、今はそれがないでしょう。そこが昔の新派にはなかった難しさです。これからこういうことがもっと増えてくるのでしょうね。
−−教えてできることではないですよね
水谷 もちろん、それぞれの役の経験がある先輩が教えるのですよ。その役を最近やった方の所へあいさつに行き、「教わって役をもらってくる」というのが習慣です。こうしたことが最近は、なおざりにされつつあるのですが、大事に守っていかなくてはいけないですね。
−−ご自身の演技で気をつけていることは何でしょう?
水谷 女形さんがやる新派が終わってしまった今は、リアル、自然な演技でいたいと思っています。「生(なま)の人間」をさらけ出す。その具合が非常に難しいのですけどね。
−−一方で、新派を見たことがない観客も増えています
水谷 芝居が好きでさえいてくだされば、(新派の芝居でなくても)いいんですよ。反対に、面白そうだと選んでくださったのがたまたま新派で、将来、「120年記念公演を見たんだよ」とお客さまの自慢になっていただければいい。私たちは、それだけでやりがいがあるのです。
(聞き手 田窪桜子)

