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【人、瞬間(ひととき)】あの歌 歌手・中島啓江さん(50)(中) (1/2ページ)
お経と賛美歌のハーモニー
賛美歌「アメイジング・グレイス」は、亡き母親が大好きだった曲だ。くも膜下出血で倒れ、数カ月間、意識が戻らないまま亡くなった。呼吸器がはずされる前、ベッドに横たわる母親の耳元で歌い続けた。
平成6年10月26日、作詞・作曲家、三木鶏郎(とりろう)の音楽葬でこの曲を歌うことになった。前日に葬儀実行委員長の永六輔から頼まれたのだ。
「『アメイジング・グレイス』にアドリブを入れて歌ってくれない? 合図したら入ってね」
「分かりました」
僧侶の読経が続く中、ドアの外から歌いながら会場に入った。朗々と。遺影代わりに似顔絵が飾られた壇上の前あたりで、ふと気づいた。場違いかもしれない、と。参列者のほとんどは目がテンになっている。
「完全に私、乱入者でした。いつ抱えて連れ出されてもおかしくない状態。逮捕されたらどうしよう? あとの一生は永さんに償ってもらおうと考えながら歌いましたよ」

