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【人、瞬間(ひととき)】あの言葉 歌手・中島啓江さん(50)(上) (3/4ページ)
このニュースのトピックス:離婚&破局
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学校でいじめられた一方、家では父親の暴力が待っていた。酒乱。家族を怒鳴り、殴る。いつ暴れるか分からない。怒鳴り声を聞くと体が震えた。
「父親から逃げたいと思っても、母は離婚しませんでした。別れたら野垂れ死にしてしまうから捨てられないって」
歌手デビューして何年かたったころ、母親が入院。父との2人暮らしでストレスはピークに達した。仕事から疲れて帰るなり「飯はまだか?」。台所は汚れ物の山だ。
ある朝、顔の右半分が動かなくなった。顔面神経痛。めまいが続き、平衡感覚もおかしくなった。メニエール氏病と診断された。リハビリをこなしたが、いまも少し後遺症がある。
平成9年、最愛の母親が亡くなってからは過食症もひどくなった。ついに父親と別居したが、金を無心され続けた。
そんな父親が亡くなり、弟と出した葬式。棺に手紙を入れた。「天国でお母さんに謝ってください。私をこの世に生み出してくれて、ありがとう」。父親に対する最初で最後の「ありがとう」だった。複雑な心境ながら、心の中で何かが変わっていた。
「つらいことがあっても、必ずいいことが待っている、くじけるな、そう思わせる力がある。『ありがとう』って、自分や人を変える言葉。忘れてはいけない言葉だと思います」
=敬称略(文 柳谷昇子)
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