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【人、瞬間(ひととき)】あの人 歌舞伎俳優・市川春猿さん(37)(中) (1/2ページ)
このニュースのトピックス:メディア倫理
■使い続けてくれた師匠
一瞬のためらいもなく、師匠の名前が出た。市川猿之助。子供のころからのあこがれだった。「目をつぶって歌舞伎役者のイメージを想像したときに、ぴったりとはまったんです」。そんなイメージがあったから、師匠選びのときにも迷いはなかった。
「手の届かない存在でありながら、ふと、父親みたいな感覚になる。うそがどこにもない純粋な人だから、信頼して甘えられるし、怒られても素直に聞くことができます」。もう20年、一緒に歌舞伎の道を歩んできたいま、そう言える。
昭和63年、国立劇場の養成研修を終えて、猿之助に入門した。2年間の研修だけで満足な芝居ができるほど、この世界は甘くはない。入門1カ月で57キロの体重が47キロになったそうだ。舞台で仕掛けや早変わりなどの演出を多用する師匠だけに、支度や世話をする弟子たちはいつも大忙しだった。
平成7年の「ヤマトタケル」(再演)では、ヤマトタケルの后となる弟橘(おとたちばな)姫の役を務めることになったが「まずいね。あんた、本当にまずいね」と、稽古(けいこ)中にずっと怒られていた。
「いろいろと言うんです。私にやらせてみて、次はこういう風にやってごらんと。でも、技術的な問題ではなかったと思います。私はどうやっていいかわからなくて、萎縮(いしゅく)して小さくなっていった。師匠の方でもどう指導していいのかわからなかったのかもしれません」

