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【人、瞬間(ひととき)】あの場所 歌舞伎俳優・市川春猿さん(37)(上) (1/3ページ)
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■稽古(けいこ)に励んだ研修所
昭和61年、東京のど真ん中、千代田区隼町の「日本一小さくてぜいたくな学校」の門を、歌舞伎が大好きな15歳の少年がくぐった。
歌舞伎俳優を目指す同期(9期生)の仲間は十数人。市川春猿はその最年少で、中学を卒業したばかりのやんちゃ盛り。「シュンちゃんはずっと、きゃっきゃっと走り回っていたね」。同じ女方の親友、中村芝のぶからはそう言われる。
「とにもかくにも、いまの私にとっての出発点です」
大人の自分を初めて感じた場所だった。
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国立劇場が45年からスタートさせた伝統芸能伝承者養成研修は、古いしきたりが残る古典芸能の世界に新しい門戸を開いた。歌舞伎、能、太神楽、寄席囃子など古典や大衆芸能の道を志す若者が集まる。教えるのは一流の俳優や邦楽演奏家、研究者たち。いわば、芸能のエリート校だ。
「毎日、電車やバスに乗って通うでしょう。初めてだったから、それだけで大人の仲間入りをしたみたいな気分でした。周りが官庁街で、少し堅苦しいイメージがあったし、厳かな気持ちにもなりましたね」
国立劇場は皇居に面したお堀端にある。隣は最高裁判所。彼らが学ぶ教室があったのは本館裏手の小さな建物の中だった。

