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【インタビュー】ベルリン国際映画祭・最優秀新人作品賞受賞 熊坂出監督
■「衝動があるから撮る」
「映画はただの商品ではなく芸術です。経済界と拮抗(きっこう)する分野になるまで戦い続けたい」。映画「パーク アンド ラブホテル」でベルリン国際映画祭の最優秀新人作品賞を受賞、32才で国際的な監督に仲間入りした熊坂出(いづる)監督はこんな大きな目標を掲げた。凱旋(がいせん)帰国した監督に、映画への思いを聴いた。(戸津井康之)
「この副賞がうれしくて」
インタビューに現れた熊坂監督は映画祭のシンボル、熊のエンブレム入りのファインダーを手に、子供のように無邪気な笑みを浮かべた。撮影現場で画面の構図を決めるためにのぞく道具だという。映画人の“勲章”ともいえる逸品で「恥ずかしいけど、さっそく次作から使いたい」と喜びをかみしめた。
受賞作「パーク アンド ラブホテル」は、脚本を完成させるまで一年以上を費やした力作だ。
《ラブホテルのオーナー、艶子(りりィ)は59歳。ホテルの屋上を公園にして地元の人たちに開放していた。公園にはベンチや滑り台があり、子供や高齢者たちの憩いの場となっていた。近くに住む主婦の月(ちはる)、家出娘の美香(梶原ひかり)ら“訳あり”の女性が次々と訪れて…》
ラブホテルの屋上の公園を都会のオアシスとして表現。密室の大人と、青空の下の子供と高齢者…。現代社会の歪みや矛盾を独特の鋭い視点で浮き彫りにする。
シンガー・ソングライターのりりィは今回、最もこだわった配役という。とことん話し合い演技指導したというが、「りりィさんは途中から艶子そのものに成り切り、何も演出する必要がなくなった。悔しかった」と苦笑する。一方のりりィやちはるは「女優の一番魅力的な部分を引き出せる監督」と信頼する。
「映画の脚本は元来、数学的なもの。理詰めで書いています。絵コンテもきっちりと」と監督。今回は「何十回と書き直しました。途中、本当に完成できるのかと悩み苦しんだ」と言う。
「テーマ、メッセージはあえて言わないと決めてます。完成したら映画は見る人のもの。見た人に補完してほしい」
フリーでテレビ番組制作の演出を手掛け、自主製作で映画を撮ってきた。平成17年、映画監督になる登竜門の一つ、アマチュア映画人のコンテスト「PFF(ぴあフィルム・フェスティバル)」に短編「珈琲とミルク」を出品し入選。長編作を撮る権利を獲得し、今回の作品を撮った。
「映画監督は成りたくて就くような職業じゃない」と言い切る。
「撮りたい衝動が沸き起こるから映像を撮り、自然と周囲から監督と呼ばれる…。それが映画監督という仕事。撮りたい衝動が無くなればその時は僕は監督を辞(や)めます」。
後進へのエールは、そのまま自分を鼓舞する“監督宣言”だった。
映画は4月26日から東京・渋谷のユーロスペースなどで公開される。


