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【「明日への遺言」の証言者たち】(1)長男・岡田陽さん(上) (1/2ページ)
■私の知らない父に出会えた
「私は家の中での優しい父の顔しか知りません。でも外では映画の中の藤田まことさんのように厳しい顔で過ごしていたのでしょうね。私がずっと知らなかった、見たことのない父に映画の中で出会えた気がします」
映画「明日への遺言」の主人公、岡田資中将の長男、陽(あきら)さん(84)は、東京都内の自宅でしみじみと語った。教職に就き、現在の肩書は玉川学園大学名誉教授。演劇人としても活躍し、1月には新作公演の演出も手掛けた。
映画の中に若き日の陽さんが登場する。父にフィアンセの純子さんを紹介するため、法廷の傍聴席に2人でやって来る。戦犯で逮捕された父とは法廷でしか会えなかったのだ。
別れの時。藤田まことさん演じる岡田中将は陽さんに向かってこう告げる。「母さんを頼む…」
岡田中将が温子さんと結婚したのは大正4年。8年に長女の達子さん、12年に長男の陽さんが生まれた。
「父は好奇心旺盛な人でした。幼い私を連れて有楽町の日劇や浅草の舞台によく連れて行ってくれた。水泳が好きで、夏には家族を引き連れて海水浴へもよく出かけました。無理をして家族サービスをするのではなく、自分が一番楽しんでいたなあ…」
中将は大正14年、英国大使館付の武官補佐官となり、2年半、ロンドンに駐在している。赴任から東京に帰ると、家の庭は色とりどりの花で埋め尽くされた。「きっと英国人の花に囲まれた暮らしに感化されたのでしょう。庭中、ダリアやバラの花が咲いていました」
だが、戦争が始まると庭から花が消え、野菜畑に変わっていった。「父は家族全員にクワを持たせましてね。皆で日が暮れるまで庭を耕しました。でもこんなつらい時にも父は故郷の鳥取弁で冗談を言い、皆を笑わせるんです。それが疲れが吹き飛ぶような絶妙のタイミングで…」
そして終戦。父が死刑判決が言い渡される前からすでに死を覚悟していたことは、家族全員が知っていた。