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【断 イタクラヨシコ】乙女かい? 落語界

2008.2.2 03:35
このニュースのトピックス伝統芸能

 「世の中、そういい話はあるもんじゃない」という警戒心は人界では必須である。だが、「世の中、捨てたもんじゃない」もまた真実であり、警戒心と素直さの兼ね備え具合は、人の成熟度を知るうえでなかなか興味深い。

 そこへいくと落語界は意外と未熟な若造に思える。芸能としては成熟しているとされるものの、業界としては“人生経験”が浅いのではないか。というのも、「空前」とも形容される落語ブームで、どうにも腑(ふ)に落ちないことがある。ついこの間まで、「落語はこのままではダメだ。現代に通用しない」と声高に衰亡論を表明していた落語家や業界人はいったいどこへ消えたのか。ウサギの巣穴か何かにこぞって落ちてしまったのか。目下そうした警鐘はさっぱり聞こえず、諸手(もろて)を挙げて落語人気を歓迎する空気が、突つけば爆発しそうなほど充満している。「ダメだダメだ」の後は「ブームで良かった」の大合唱。初めての恋愛で一喜一憂する、うぶな乙女並みだ。

 人の世のリアリティーを独特な流儀で示すこの演芸は、ブームの前だって当然面白かった。でもそれは、演者の人柄がことさら透けてみえる芸能であることを心得た噺家(はなしか)が、自分と落語、その双方の魅力を十全に発揮しようとする場合のみ。ブームだからといって、そうしたソウルフルな落語家が急に増えるわけではない。

 いわば衰亡論は、マイナーとされたこの芸能を偏愛するあまりの過保護な過小評価だった。片やブームにわく業界の今のスイートな空気は、モテ男をつかまえたつもりの女子が、甘えてもたれかかっているみたい。落語の真価は、たぶんそのどちらでもない場所にある。(文筆家)

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