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【人、瞬間(ひととき)】あの言葉 俳優・関口知宏さん(35)(下)
■諸法無我、自然のままに
31歳で旅番組に出て、気づいたら日本や世界を鉄道で旅する生活が約4年に。今や日本一有名な“旅人”となった。昨年には、集大成ともいえる『関口知宏の中国鉄道大紀行〜最長片道ルート36000kmをゆく』(NHK)の旅に出た。
ところが…。旅も長くなると“コントロール感”がにじみ出る。何十回も乗り換えをしているのに、さわやかな表情を。寝癖を直す時間がないだけなのに、寝癖姿がいつしか旅そのものや自身の印象に。別れの場面は涙で−。何かが違う。
そんなとき、日本列島縦断の旅から一緒だったカメラマンが周囲を一喝してくれた。「仕込むな! 関口さんに自然にやらせてくれ」
出会った人とさよならした後も、ボサッとしている自分。番組的にはサービス精神がないのかもしれないが、自然な方がいい。泣くよりも、疲れて寝ている方がリアリティーがある。寝癖のシーンと笑っているシーンだけ集めたら、それは違うものになってしまう。
「分かってくれている人がいた。そのカメラマンが、関口さんと仕事してよかったって言ってくれて。運命の人だな」
旅を始める少し前、たまたま手にとった本に、ある言葉が書かれていた。
諸法無我(しょほうむが)。
仏教の教えのひとつだ。知識として知っていただけの言葉だったが、旅の道中で「あれだっ」とその意味に気づき、かみしめ続けた。
《あらゆる事物には、永遠・不変な本性はない。変化をその変化のままに、変化するものこそ私なのだと説く》
俳優になってからは、思い通りにいかないことばかりだった。今となっては笑えるが、エビが嫌いだといえば、エビの仕事がくる。もちろんいまだって好きなことばかりを選べるわけではない。けれど、嫌いなものが、好きなものに変わることもある。
「万物がかかわりあって生きているこの世では、思い通りにならないこともある。そりゃ、そうだ。それまでは思い通りに事を運びたいと考えていた。ま、生まれ育ちがお坊ちゃんだからかもしれないけど。旅を経て、今はえらい幸せ。型にはまらずやっていこうと思ってます。自然体で」(文 舛田奈津子)
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次回は作家、宮本輝さんです。

