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【人、瞬間(ひととき)】あの場所 俳優・関口知宏さん(35)(上) (1/3ページ)
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■“地獄”で出合った大室山
31歳の夏、友人に誘われて静岡県伊東市の大室山に登ることになった。
夏なのに、頭がもうろうとしてなぜか春だと思いこんでいた。じつは季節など、どうでもいい気分だった。部屋の電気がつけられない。カーテンが開けられない。ほんの少しの明かりがまぶしい…。心身ともに疲弊しきっていた。
海抜580メートルの火山は、地元では願い事をかなえてくれる山と慕われる。直径300メートル、深さ70メートルの火口はすり鉢のようにくぼんでいる。
「どうせ登ったって、リフト乗って、富士山みて、海みて、売店のコーヒー牛乳飲んで終わり。『つまんないよ』って友達に言ったんだけど、どうしても行きたいからって」
稜線(りょうせん)に立ち、火口を眺めた。足下に大きな穴が広がっている。何となく降りてみたくなった。
何度も来て、知り尽くしているつもりの場所だったのに、降りてみたら全然違う風景が広がっていた。
「まさに地獄で出あった大室山って感じ。その瞬間に、子供のころの記憶がよみがえった。想像力や好奇心が心の中で息を吹き返した」
草と空しか見えない。その景色に限りない自由を感じた。
「大人になったら必要ないって、我慢して、フタをしてしまいこんであったけど、そうか、自由に出してもいいんだなって」

