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【インタビュー】女優・麻生久美子 壁乗り越えた演技派 (2/3ページ)
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なぜリセットを?
理由は深刻だった。「私には女優という仕事が向いていないんじゃないかと悩みました。当時は自分の演技を見るのも嫌で…」。引退を本気で考えたという。そんな時期にジャリリ監督の映画化が決まりイランへ呼ばれた。彼の言葉は本当だった。「あなたの演技、女優としての存在感に惹かれた」。8年前、彼がかけてくれた言葉が、彼女を女優に踏みとどまらせる心の支えとなっていた。
完成した作品の試写を2回見たという。「あれだけ自分の芝居が嫌で、これまでは試写も見なかったのに」と苦笑した。そして“芝居をしない”自分の新たな姿を発見し驚いた。「私はこんな表情もできるんだ」
女優としての自信を取り戻す転機となった作品がもう1本ある。昨年公開された「夕凪の街 桜の国」(佐々部清監督)。第二次大戦中の広島で被爆、26歳の若さで亡くなる女性、皆実を演じた。「私にはこの役はできない」と悩み続け、演じることが怖くて仕方なかったという。だから撮影前に広島、長崎の慰霊碑の前で祈った。「私に力を貸してください」。見えない力に背中を押され、現場では麻生久美子ではなく皆実であり続けることができた。
「ハーフェズ」とはまったく異なるアプローチで役作りに挑んだ結果、皆実の表情、動きはやはり自身を驚かせる。「こんな自分がまだ私の中にいるんだ」と。
女優としての誇りや自信を取り戻した彼女はアグレッシブにこう言う。「新たな一面を引き出してくれる監督や共演者に会いたい。まだまだ知らない自分に出会いたいから」
文 戸津井康之



