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【シネクラブ】「中国の植物学者の娘たち」 ダイ・シージエ監督インタビュー (1/2ページ)
■美しい愛は禁忌(タブー)の中で生まれる
秘密の花園で人知れず禁忌を破る二人の美しい女性。みてはいけないものをそっとかいまみる悦楽…。耽美(たんび)主義を思わせる端正な映画を仕上げたのは、フランスに住む中国人のダイ・シージエ監督(53)。「フランスや日本のように自由で禁忌の少なくなった社会では、こういう物語は起こりえない。でも、まだまだ自由が足りなくて禁忌がたくさんある中国社会では成立するのです」。シージエ監督の作品は中国国内ではいまも公開が認められていない。
湖に浮かぶ緑濃い小島。外界から閉ざされた空間で植物とともに暮らす植物学者のもとに、1976年の唐山地震で両親を失い、孤児院で育った女子学生、ミン(ミレーヌ・ジャンパノワ)が実習生として赴任する。遅刻したミンは到着するなり植物学者から怒鳴られ、翌日には薬草と毒のあるトリカブトを間違えてまた怒鳴られる。落ち込むミンをなぐさめたのは、植物学者の娘、アン(リー・シャオラン)。アンも10歳で母親を亡くし、厳格な父親と2人で寂しい毎日を送ってきた。
ある夜、植物園の温室で、ミンは薬草を蒸したベッドに裸体でまどろむアンを偶然みかけた。アンの美しさに呆然(ぼうぜん)とするミン。いつのまにか2人は温室で癒しあう関係になっていく…。
「僕自身はとにかくラブ・ストーリーが撮りたかった。僕が考える美しい愛は禁忌の中でこそ行われる、禁じられた恋にある。でも、この映画に出てくる2人は同性愛がなんたることかもおそらく意識していなかった。ひとりは孤児、もうひとりは厳格で伝統に縛られた父親と暮らしていて、互いになにか愛を求めていた。その2人がたまたま出会った物語です」
この物語には、もとになった実話がある。中国で同じ工場に勤める二人の女性が同性愛者で、一人の父親を殺害した容疑で2人とも死刑になった。中国紙の報道でこの事件を知ったシージエ監督は、この顛末(てんまつ)に非常に惹(ひ)かれたそうだ。
「2人の女性が愛し合い、部屋を借りて一緒に暮らすことが許される社会だったら、こういうことは起こらない。でも、いまの中国ではまだだめです。例えば、学校の寮で女の子同士が親密になることがあっても、それを公(おおやけ)にはできません。だから私は、美しい愛の世界を描いたと同時に、そういう不自由な社会を告発したのです」


