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【わたしの失敗】タレント・桂小金治さん(81)(3)
■「苦節3年」のはずが「7年」
「客席では『あっ、師匠、間違えた』って言ってたらしいよ」
映画俳優、テレビ司会者…と、さまざまな分野に挑戦し、近年はもっぱら講演で全国を駆け回る。しかし、落語が好きな気持ちに変わりはない。還暦や古希などの節目節目には高座に上ってきた。
その高座で、手痛い失態を演じてしまったのは平成15年10月、国立演芸場(東京)で行われた「桂小金治喜寿独演会」での一席。この日は「三方一両損」で始めて芸談を挟み、「芝浜」で締める段取りだった。
「芝浜」は、飲んだくれの魚屋が芝(東京都港区)の浜辺で大金が入った財布を拾う人情噺。魚屋は当分遊んで暮らせると思い大騒ぎをして寝るが、次の日には「財布なんて知らない」という女房の話を信じて、「夢だった」とあきらめ、性根を入れ替えて懸命に働く。そして、商売が軌道にのった3年目の大みそかに、女房から「じつは…」と真実を聞かされて−というのがあらすじだ。
この「3年」を「7年」とやってしまった。「高座は7年ぶりで、頭に『7年』というのがあって、つい言っちゃったんだよ」。有名な演目だけに、客の多くは首をかしげたはずだ。間の悪いことに、文化庁の芸術祭参加公演で、客席には審査員らの厳しい目も。
自分でも、言ったとたんに間違いを自覚した。内心、ヒヤッとしたが、場数と度胸がものをいう。そのまま顔色も変えずに、サゲまでやり通した。女房にねぎらいの酒を勧められた魚屋「よそう、また夢になるといけねぇ」−。苦節3年が7年になった分、話に重みが加わったかも。
落語は、テレビ出演が忙しくなり、寄席に出なくなってからも、自宅で練習していた。これまでに、高座で失敗らしい失敗はしていなかったというが、こともあろうに喜寿の記念の晴れ舞台での失言は、「弘法にも筆の誤り」というべきか。
「すんじゃうと、ケロッと忘れるほうなの。ベストを尽くしたんだからくよくよしない。たまの間違いがあっても、人間だから仕方がない。この次間違えないようにしようって、自分にいい聞かせるんだよ。後悔するぐらいだったら稽古(けいこ)する」。今も高座に上れば、歯切れのいい落語をファンに聞かせている。=敬称略(堀晃和)

