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【わたしの失敗】タレント・桂小金治さん(81)(2)
■アフレコ知らず冷や汗
「小金治さん、そのセリフ、アフレコになりますんで」
「ああ分かってる、分かってる、いいですよ(でも、アフレコって何?)」
昭和28年の正月映画「学生社長」(川島雄三監督、鶴田浩二主演、松竹)の撮影現場。学生役で出演した小金治は、スクリプター(記録係)に威勢よく返事したものの、実は意味がまったく分かっていなかった。
「知らないって言うのがイヤだから、OKって言っちゃった」
アフレコはアフターレコーディングの略。映画などで、あとから撮影映像にあわせてセリフや音を録音することだ。売れっ子落語家だった小金治が、川島監督の「こんな私じゃなかったに」(松竹)で映画デビューしたのは前年の27年。キャリアは浅く、アフレコを知らないのも無理はなかった。
後日、撮影所のアフレコ室に呼び出しがかかった。行くと、自分の映像が映っている。「何これ?」とたずねると、スクリプターは「あのとき言ったでしょ?」とけげんな表情。「え、そうだった?」とすっとぼけたが、肝心のセリフをまったく覚えていなかった。
「インド語のガイド役の場面で、そのセリフはインド語。スクリプターも控えてないって言われてね」
台本にない即興的なセリフだった。冷や汗をかいたが、メモに書いて辞書に貼(は)り付けていたことを思いだした。小道具室にあわててすっ飛んでいくと、幸いその辞書が本棚にあったという。
しかし、ほっとしたのもつかの間。今度は、メモを見ながらあわせようとすると、早口のセリフなので映像に追いつかない。「それで『全部覚えてこい』って言われて、外で何度もセリフを繰り返したんだよ」
そんなエピソードを語りながら、セリフを暗唱してくれた。「イスメンデルメン…ベンテンサマヘバコ」。難解な言葉がすらすらと出てくる。ニヤッと笑って「そのときそれだけやったから今でも覚えてるんだよ」。
この話には後日談がある。東京都内にできた語学学校に出かけていってこのセリフを言ったところ…。「『全然わかりません』って。川島雄三さんが作ったインド語だったんだよ」
=敬称略(堀晃和)

