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【話の肖像画】奈良から世界へ(5)映画監督・河瀬直美さん
■「もてなし」大切に発信を
≪河瀬さんの作品づくりの出発点には「一番の観客は自分」という思いがある。自身の思いをまず映し出し、共感へと広げていく。そのため、作品のテーマは、出会いの喜び、愛する人を失う悲しみなど、誰もが体験するような主題が多い≫
−−もともとは映画ファンではなかったとか
河瀬 学生時代はバスケットボールをやっていて、映画は全然見ませんでした。映画の世界はよく分からず、距離感がありました。けれど、進学した専門学校で見せられた映画が、フランスの新しい世代の作品だったりサイレント映画だったりして「何ておもしろいんだろう」って。「何をやってもいい」というような自由さを感じました。
ただ、映画製作に興味はもったものの、何に対してどう訴えればいいのか分からなくて。悩む中で「自分にとって何が大切なのか」と言ってくれた講師がいて、それならば一番大切であることを目指そうと決心しました。
−−次回作はタイが舞台で、すでにロケにも行かれた
河瀬 バンコクから2時間くらいの村で撮ったんですが、日本人の私にとって学ぶことが多かった。タイを選んだのは、医療にも取り入れられているタイ式マッサージへの興味からだったんですが、寺院のあり方とか出家について話を聞いていくうちに、だんだん仏教の方に興味を持って…。タイでは誰でも出家することができるんですが、なぜこれほどまで仏教が日常的に残っているんだろうかと不思議に思いました。
−−土地柄の魅力なのでしょうか
河瀬 すべてがすごくおおらかだと感じました。日本は豊かで自由、タイは経済的に不安定とみられがちですが、私には、今の日本はすごく窮屈で、タイの方がはるかに豊かなように見えました。
−−同様に仏教が身近にある故郷、奈良への思いは
河瀬 歴史遺産が数多くあり、原始林もある奈良に世界の人が興味を抱いている。この町で、国際映画祭を始めてみてもいいのではないかと提案しています。ただ映画を見るだけでなく、人々がふれ合ったり、特産物を食べたりすることで交流が成り立っていきます。奈良は「らしさ」を大切にする観光地になればいい。人によるもてなしこそ、大切だと思います。
−−改めて、カンヌでの受賞を通じて感じることは
河瀬 私が行ったことのない国の異なる文化の中で生きている人たちにも、自分の映画が届いて、何かしらの共感を得てもらえるということが本当に幸せです。=おわり
(岩口利一)
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【プロフィル】河瀬直美
かわせ・なおみ 昭和44年、奈良市生まれ。旧大阪写真専門学校卒。「殯の森」で第60回カンヌ国際映画祭の審査員特別大賞「グランプリ」を受賞。

