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【話の肖像画】奈良から世界へ(4)映画監督・河瀬直美さん
■個人的体験を共感に
《認知症の男性と女性介護士の交流、きずなを描いた「殯(もがり)の森」誕生の背景には、認知症の祖母の介護と第1子出産という、河瀬さん自身の体験が深くかかわっていた》
−−河瀬さん自身、介護経験を通じて、どのような思いを持たれましたか
河瀬 祖母は、だんだん日にちが認識できなくなったり、薬を飲み忘れたりするようになって最初はどうすればいいのか分からなかった。けれど、失われていく機能を追い求めるのではなく、残っている機能をどう見つめていくかが大切なんだ、そうすることで逆に介護する側も喜びを与えてもらえるんだということを知りました。これは人と人との関係性に通じるのではと思い当たり、映画のテーマが自然と絞られてきました。
同時に子供も授かりました。人間は総じて、年老いていく者には冷たく、将来のある子供には温かい。でも、私を飛び越して子供がおばあちゃんに、おばあちゃんが子供にいい影響を与えてくれ、私が学ぶことも多いんです。人は自分で何でもできていると思いがちですが、子供やお年寄りから学ぶことが多い。ケアする側、される側が逆転していくような物語が描けないかと思いました。
−−その思いを作品に投影されたのですね
河瀬 最初は認知症のしげき(主人公)をもてあましても、最後に共感を抱けるようになれば、観客の視点が変わるのではないかと思いました。その人の人生で何か気付いてもらえるものがあればいいと。映画づくりでは、自分の個人的体験をどうすれば形として残せて、共感という普遍性を持たせられるのかをずっと追求しています。
人間誰しも、誰かを愛し、憎むこともある。そうしたことの中から「生きるとは」と考え、形にし、共感を得る。それができれば…。自分の役割は、そこにあるような気がします。個人的なことであっても、人間として普遍的なことであれば、誰もに共通するものがあると思います。
−−映画づくりの原点は
河瀬 自分の中に、今この瞬間がなくなってしまうことに対するせつなさがあります。映画が生まれたころ、動いているものを再現できるということは、タイムマシンに匹敵するような驚きだったことでしょう。私もそうした喜びを持ちました。
自分が好きな花をピントを合わせて撮り、映写機で映すと、そこには自分も一緒に映りこんでいるんです。それで映画づくりのとりこになり、20年間続けてきました。(岩口利一)

