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【わたしの失敗】映画監督・森田芳光さん(57)(3)
■非難の嵐“黒澤シンザン発言”
「ぼくは日本のスピルバーグ」「この作品にはぼくだけでなく、日本映画の将来がかかっている」−。思ったことをためらうことなく言葉にして、周囲をとまどわせることが多い。
平成9年に公開された「失楽園」のヒットを受けて行われたインタビューでは「今回のヒットでわかったのは、ぼくのように優秀な監督に、きちんとした企画と制作費さえ渡せば、絶対に成功するんだってことですよ。この事実を日本映画界は思い知るべきだ」と豪語し、インタビュアーを絶句させた。
森田は「そんなこと言ったっけ」と苦笑しつつ、言葉の背景をこう解釈する。
「プロデューサーが監督ではなく、役者ばかりを見るようになった。でも、映画はやっぱり監督なんだよ。彼らは、自分の言うことを聞きそうな、経済的・精神的に弱い者ばかり監督に起用して、ひどい作品ばかりを作る。そうした現状に一言いいたかったんだろうね」
大きな口をききながらも、「家族ゲーム」「それから」「(ハル)」「失楽園」「39 刑法第三十九条」「間宮兄弟」と確実に話題をさらう作品を作ってきただけに、周囲も森田の言動を楽しんでいる節がある。
しかし、「舌禍」に近い出来事もあった。
昭和60年公開の「それから」でブルーリボン賞スタッフ賞を受賞した際、感想を求められた森田は「黒澤明監督が戦後初のクラシック三冠馬・シンザンなら、ぼくは皇帝・シンボリルドルフ。クロサワを超えるのはぼくしかいないだろう」と発言。「いったい何様のつもりだ!」と各方面から猛烈な非難を浴びた。
「競走馬に例えたのはまずかった。そりゃあもう、さんざんたたかれました」と頭をかく。
“大言壮語”は世間へのサービス? それとも自分を追い込んで実力以上のものを引き出すための戦略? 深読みして聞いてみると「いや、そんなことは考えてません。毎回、本気でそう思って言ってるんですよ」。けろりとしている。
“黒澤シンザン発言”についても「自分の中でも最大の失言」としながら、いまだに心の片隅でこう思う。「映画監督ってのは、それくらい自信に満ちてた方がいいんですよ」と。=敬称略(文 岡本耕治)