MSN Japanのニュースサイトへようこそ。ここはニュース記事全文ページです。

ニュース: エンタメ 芸能界マスコミ音楽ゲーム・コミック写真RSS feed

【わたしの失敗】歌舞伎俳優・中村吉右衛門さん(3)

2007.9.14 09:30
このニュースのトピックスわたしの失敗

■「もうちょっと」で絵が台無し

 「絵が趣味」という。著書に『播磨屋画(え)がたり』があり、2年前には、東京・銀座の吉井画廊で、「中村吉右衛門スケッチ展」を開いた。絵心は、どんなときに動くのだろうか。

 「描いているときは無になる。それが好きですね。対象をじっと見つめていると、いろんなことがわかってくる」。例えばコップなら、どんな光り方をするのか? 液体を入れるとどうなるのか? それを自分の絵筆で描きたいのだという。

 しかし、吉右衛門の描く水彩画はやり直しが効かない。

 「ぼくはしつこい方らしいんですよ。もうちょっともうちょっと、足しているうちに、筆を措(お)く時期をいつも逸してしまう。家内が見ていて『ああ、今やめればいいのに…』と言う。すると、もう失敗です」

 絵を通して、役者魂が騒ぎ出すこともあるそうだ。

 「モネの『カササギ』という雪景色の絵を見たときには、雪の匂(にお)いとか、山の匂い、光の匂いがした。寒いけど、あたたかい。風景の中に、自分が溶け込んだような感動を覚えて、こんな絵のような芝居がしてみたいと思いました」

 名画を描いた人物を演じてみたいという夢もある。国宝「松林図」などで有名な桃山時代の画家、長谷川等伯(とうはく)。画家の姿が目の前に浮かび、シノプシス(あらすじ)を書いてみた。いま脚本家を探している。

 「『松林図』には、等伯の気持ちや人生が込められていて、それが伝わってくる。名画家は絵にすべてを託せる。狩野派という巨大な名門に立ち向かった姿がどこか、初代(吉右衛門)に重なる。等伯を演じることで、そこに初代の面影が出せたら」

 初代が歌舞伎をどう考えていたのか。どういう演出や演技をしたか。いくら口で言っても伝わらない。等伯の姿を借りた芝居で、一代で名を残した役者を描いてみたい。そう考えている。

 「画家の方は、完成に時間をかけられる。役者はそのときが花。年をとってからがいい役もあるけれど、若い未熟なときが花という役もありますよね」とも。

 今月の「秀山祭」でも、初代が演じ、人間味を盛り込んだ熊谷や清正らの役に挑戦している。何度も何度も演じ続けて、役者という人生を全うする。絵は人柄を表すというが、そこに「もうちょっと」と絵筆を離さない姿が重なる。

 「絵と同様に、人間も引き際が大事。桜の花のようにサアッーと散れたらいいのですが…」と笑う吉右衛門。絵で失敗しても、舞台には“名画”を描く。

 文 生田 誠

PR
PR

PR

イザ!SANSPO.COMZAKZAKFuji Sankei BusinessiSANKEI EXPRESS
Copyright 2008 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。