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【はてなは、はてなし】論説委員・坂口至徳 ロボットの国際標準目指せ
人とともに生活する次世代型ロボットの開発は、日本が世界に誇る技術だ。高齢社会や少子化に伴う労働力の減少など社会構造の変化を背景に活躍の場を想定したさまざまな夢が語られる。そのロボット技術がようやく本格的な実用化の準備段階に入ってきた。
トヨタ自動車は今夏、開発した電動の2輪ロボットの実証試験をトヨタ記念病院で行った。患者らを乗せて自律的に移動するロボットで、段差や凹凸があっても角度を修正してバランスを保ち、障害物もセンサーで感知して避けられる。病室など狭い空間でも使え、人の呼び出しに応じたり、荷物を載せてついて回ったりできる。
1週間の実証試験では、周囲の医療機器への電子的な影響などをチェックし、使用後にアンケートも行った。
一方、ホンダは、世界初の二足歩行ロボットを作った技術を生かし、脚力が衰えた高齢者向けと、中腰で作業する労働者向けの2種類の歩行支援機を作った。これも病院や自社工場で有効性を見る試験をする。
このように高い技術力を持ちながら、市場への投入がきわめて慎重に進められているのは、自律する機械が、人と共生するがゆえの課題があるからだ。それは「だれもが安全に使え、周囲に影響はないか」「導入の効果に見合った価格にできるか」「保守管理はどうするか」といった内容になる。
たとえば、産業ロボットの場合、工場内の無人に近い場所で技術者が監視することで暴走など不測の事態があっても、ある程度は防げる。ところが、医療や介護など高齢社会でこれからニーズが高まる分野は、必然的に人と直接に触れ合うロボットが使われるので、100%に近い安全面での信頼確保が求められる。さらに、人が出入りする場所での事故には不確実な要素があり、クリアするのは至難の業だ。
こうしたことから、経済産業省は、昨年の「安全性確保のためのガイドライン」に続き、さらに具体的な安全基準づくりに乗り出す。どこまで技術的に達成すればよいか、開発のよりどころになる一定の基準を提示することが、企業などの市場参入への意欲を活発化することにもつながるからだ。
また、米国や北欧をはじめ世界各国で、この種のロボットの開発が活発になり、日本に迫ってきた情勢も視野に入っている。国際標準化機構(ISO)では2011年ごろに生活支援型ロボットの国際規格を決める予定になっている。その前に先進国日本の基準を完成し、国際標準として認めさせる戦略も立てている。
ただ、この分野の実用機としては、国内では、高齢者の介護や、高齢者自身のリハビリに役立つ装着型ロボットのリース販売が10月に始まったばかり。いまだ確実な市場が形成されていない。
現在の市場規模は産業ロボットの約5000億円に対し、数百億円とみられるが、順調に実用化が進めば、2025年には6兆円に膨らむとの予測もある。それだけに、安全基準などで日本がリーダーシップをとっておくことは産業の育成に有利に働くだろう。
ここにきて、総務省も介護ロボットなどをインターネットでつなぐシステムの開発を進める構想を立てている。ロボットを街頭に設置し通信で連絡を取り合い、障害者らをサポート。研究開発費を平成21年度予算の概算要求に盛り込んだ。日本の独自技術への国を挙げての支援は技術開発の追い風になるだろう。