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【ウェブ立志篇】米ミューズ・アソシエイツ社長 梅田望夫

2008.4.28 03:22
このニュースのトピックス梅田望夫

 ■信頼結ぶ英語圏の実名サイト

 英語圏と日本語圏とでは、ネット空間の雰囲気がまったく違う。そのことを多くの日本人は知らない。もう15年近くネット空間の進化を観察している私は、英語圏を眺めては「またすごいものができちゃったな、やられたな」といつもため息をつく。気を取り直しては、その事実を日本の人たちに伝えなければと思う。そして今日も文章を書いている。

 「お前は何者なのだ。お前の価値は何だ。これからお前は何をしたいのだ」

 欧米の若者たちは常にそう問われながら育つ。個を磨き、自分の個性を発信しながら社会を生き抜いていくようにと、子供のころから教えられる。

 そんな「実名で自己を表現しながら顔を上げて生きる」という欧米の「強い文化」を、英語圏ネット空間に持ち込んで標準化してしまった会社がある。フェースブックというシリコンバレーの未公開ベンチャーだ。

 日本のミクシィと同じ、会員限定の情報交換サイト「SNS」の一つである。会員数は全世界で5000万人を超え、英語圏の35歳以下の利用者が圧倒的に多い。サービスのルーツが米ハーバード大学での教授や学生の間での情報交換用途だったこともあり、利用者の学歴は高く、その大半が、顔写真、実名、自らの詳細なプロフィルを公開し、相互にコミュニケーションを取り、友人知人のネットワークをネット上で広げている。意識が高く、留学を志しているような日本やアジアの学生たちも多く参加するようになった。欧米英語圏の若者たちを中心に「強い文化」が世界に広がっているのだ。

 「匿名参加者が中心で、完全には自分を明かさない人が多い日本とぜんぜん違う。実名で、その人に関する情報が大量に公開されているフェースブックだと、それをお互いに読むことで相手のことがよく理解でき、会わなくても信頼関係を結べます。海外旅行に行くときは、フェースブック上で知り合った各国の友人の家に泊まります。大抵はタダだし、ユースホステルよりずっと安心なので、これからは学生貧乏旅行の主流になるでしょう」とは、今秋からロンドンに留学する20歳の日本人学生の言である。

 昨年10月、マイクロソフトがフェースブックに出資したとき、150億ドルという同社の時価総額評価の高さに世界中が驚いた。能力が高くやる気のある世界中の若者たちの多くが「人生のインフラ」としてフェースブックを利用し、その人間関係の地図のようなものが可視化されつつある。マイクロソフトはその価値を、これほどに高く評価したわけだ。ここ数年で、私がいちばん痛切に「やられたな」と思ったのは、このフェースブックの勃興(ぼっこう)だった。

 ネット空間に光と闇の両方が存在するのは当然のことで、現実社会に光と闇があることの鏡像にすぎない。「闇の部分が存在する」という理由だけでネットそのものを忌避する傾向が続けば、日本語圏ネット空間はますます特殊なものになっていくなあ。そう嘆きつつも、自分が20歳のときに、フェースブックのようなサービスがあったら、そこに飛び込み、人生の可能性がどれほど広がったろうかと、現代を生きる若者たちを心からうらやましく思ったりもする昨今である。(うめだ・もちお)

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