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【正論】「IT」と人間革命 近代人と異なる「ネット人格」 東京大学教授・西垣通 (2/3ページ)
このニュースのトピックス:ネット社会
とくに興味深いのは、ネット上でつづられる個人の日記「ブログ」である。若者はもちろん、今や多くの老若男女が、気に入ったブログの熱心な読者になり、自分でもブログをつづる。人々はブログを通じて見知らぬ相手とつながり、さらに自分のアイデンティティーを見いだそうとしているのだ。そこにはあたかも結社のように、一種のネット共同体が形成されていく。
100年あまり前、新聞は人々の意見をまとめあげ、近代国家を支える「国民」をつくりあげた。さらに50年ほど前から普及したテレビは、大量生産・大量消費の共同体をつくりあげた。そして今や、ネットが、新たな人間同士の出会いや連帯の場をつくりあげつつあるのである。注目すべきは、ブログを書くことによってネット上に出現する人格が、これまでの近代的な個人とはやや異なる性格を持っているという点である。
近代的な個人とは、少なくとも理想的には、独立して思考する主体である。政治的・経済的な自由を要求するかわりに、首尾一貫した論理にもとづいて行動し、言明したことに責任をとる人格である。たとえ現実と理想とのあいだに落差はあっても、この理想的な近代的個人を基準にしてものごとが語られてきたことは間違いない。
自己イメージ自由自在
しかし、ネット人格とはそういう存在ではないのである。男性の名前で書かれたブログも、実は著者は女性かもしれない。むろん、逆もありうる。一人の人間が幾つかの名前で別々のブログを書くこともできる。あるいは逆に、何人かが交代で、一つのブログを書くこともある。そこに出現するのは多重人格や融合人格なのだ。彼ら・彼女らは、ネット上の言説から強い影響を受けつつ、自由自在に自分のイメージを変転させていく。

