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【正論】「IT」と人間革命 近代人と異なる「ネット人格」 東京大学教授・西垣通 (1/3ページ)
IT革命という言葉が広まってから約8年たった。社会はどう変わっただろうか。肝心なのはそれが、技術や経済だけでなく「人間の革命」でもあるという点なのである。
振り返れば、進展はそれなりにあった。ブロードバンド回線はかなり普及したし、放送と通信の融合やユビキタスネット技術についても、専門家のあいだで地道な努力が積み重ねられている。中でも一般の利用者にとって最も衝撃的だったのは、一昨年に米国から到来したウェブ2・0ではなかっただろうか。
それはまさに黒船だった。専門家は、単なるIT業界におけるパソコンメーカーと検索サービス企業との覇権争いと分析するかもしれない。だが一般利用者から見ると、データベースから瞬時にさまざまな知識を検索でき、しかも無料のアプリケーションソフトも使えるというのは朗報というほかはない。
むろん、能天気なウェブ2・0礼賛には批判もある。無料というのは、広告と組み合わされているからであり、一般利用者がアプリケーションソフトを使用すると、いつのまにか広告の片棒をかつがされてしまう。検索サービス企業に情報が一極集中し、知らないあいだに操作される危険性もないではない。
新たな共同体の誕生
だがこれらの長所短所を別にして、さらに議論すべき大切な問題は、ネットによって新たな人間観が生まれつつあるという点なのだ。
ウェブ2・0によって、一般の人々がネットを読み書きする自由度ははるかに大きくなった。ネットはすでに、テレビより身近なメディアになりつつある。とりわけ若者は、マスコミよりネットの情報を頼りにし始めている。
独り暮らしの若者で新聞をとらない者は多い。学生たちは、無料百科事典であるウィキペディアをはじめ、ネット上で流通している記事や知識を検索してリポートを書く。ウィキペディアの書き手には誰もがなれるのだ。

