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【ウェブ立志篇】米ミューズ・アソシエイツ社長 梅田望夫

2008.3.31 02:19
このニュースのトピックス梅田望夫

 ■私塾創設、ネットで実現

 最近いちばんうれしいことは、日本の飛び切り優秀な学生たちとウェブを通して知り合い、深い交流が始まったことである。志を持って目を輝かせている、やる気のある若者たちと付き合うことほど楽しい時間はない。

 彼ら彼女らは皆、私の著作やブログを読み、直接、私にコンタクトを取ってくる。下は中学生から上は大学院生まで。私はメールアドレスを公開してはいないが、ウェブ上で積極的に活動している私に連絡を取ることくらい、若者たちにとっては朝飯前なのだ。

 私は、学生たちの進路の悩みや相談ごとにメールで答え、皆のブログを読み、感想を述べ、勉強の仕方を教えたり、ときに励ましたり、必要ならば日本に住む友人を紹介したりもする。中には、私が住むシリコンバレーまで訪ねてくる者もいるし、私が東京に出張した週末に、朝食を一緒にとりながら込み入った話をすることもある。

 そこでふと思いだすのは、中学時代の恩師のことである。もう亡くなられたが、私が学んだ慶應義塾普通部に、吉村啓という数学教育とコンピューター教育に情熱を傾けた素晴らしい先生がいた。

 70年代前半といえば、まだパソコンなど存在せず、コンピューターは巨大な組織でなければ持てない高価な代物だった。しかし先生は、希望する生徒たちを集め、放課後、コンピューターのプログラミングを教えた。そして、もし何かトラブルが起きても自分が全部責任は負うよとおっしゃって、中学生でも大学まで出かけていけば大型コンピューターを使える環境を用意してくださった。私は、放課後に未知の可能性にわくわくした生徒たちの一人だった。

 当時の雰囲気は、まさに吉村私塾と言うべきものだった。先生の教え子の多くが、先生の影響で、大学や大学院でコンピューターを専攻していたから、そんな先輩たちが塾頭のような役割を果たし、やる気のある中学生を指導していた。私自身、高校に進んでも、先生の課外授業を手伝いに行ったりしていた。

 その吉村私塾の雰囲気が知的で素晴らしかったからこそ、私はコンピューターの世界に興味を持ち、のめりこんでいった。そして、それがその後の私の人生を大きく規定することになった。

 吉村先生への恩を心の中で振り返りつつ考えるに、私がいま充実感を持って取り組み始めた日本の学生たちとの交流は、いずれ私塾のような形に発展させていけるのではないかということだ。

 大人たちにとってのウェブの今後の大きな可能性のひとつとして、私塾の創設がある。私は、確信に近い思いで、最近そう考え始めている。

 ウェブ進化は、すべての人が、不特定多数に向けて自己を表現する可能性を開いた。ブログはその初期の道具にすぎず、これからその機能はさらに進歩していく。ウェブは時空の制約を超えるから、シリコンバレーに住み、教育を本業としない私のような者でも、志さえ持てば、志向性を同じくする若者たちに、これまでの人生で学んできたことを伝え、良き刺激を与える役割を果たすことができるのだ。ウェブ時代は、まだ追求されていない可能性をたくさん秘めた、まだ始まったばかりの面白い時代なのである。

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