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【産経抄】10月16日
このニュースのトピックス:子供の安全
世の中、首をかしげる事件に事欠かない。長崎県諫早市の小学6年生の女児が、大阪市のマンションに8日間連れ込まれた誘拐事件もそのひとつだ。20歳の会社員が逮捕されたが、保護された女児は「帰りたくない。お兄ちゃんは悪くない」と話しているという。
▼はっきりしているのは、ネットがらみの事件ということだけ。女児が開設したインターネットのブログを通じて2人は知り合い、女児が母親あてに送ったメールから、警察はマンションを割り出した。
▼「ネット社会」がテーマだった日曜日付小紙の川柳欄で、こんな作品が目にとまった。「文(ふみ)を待つ『一日千秋』死語となり」。斎藤茂吉が年若い恋人にあてたラブレターの一節を思いだす。「御手紙いま頂きました。実に一日千秋の思ひですから、三日間の忍耐は三千秋ではありませんか。(中略)ふさ子さんどうか、御願だから、ハガキでいいから、下さい」
▼確かに、茂吉の時代と違って、メールは一瞬のうちに届き、携帯電話はところかまわずかかってくる。サラリーマンは短期間で成果が求められ、コンビニでは売れ行きの悪い商品はすぐに取り換えられる。
▼1日どころか、1時間だって、待てない社会になった。そんな時代に、哲学者の鷲田清一さんは警鐘を鳴らす。「意のままにならないもの、どうしようもないもの、じっとしているしかないもの、そういうものへの感受性をわたしたちはいつか無くしたのだろうか」(『「待つ」ということ』角川選書)。
▼それにしても、容疑者にそそのかされたとはいえ、女児の大人びた行動にも驚く。貯金箱から金を持ち出し、自宅に「捜さないでください」と書き残していたという。早熟も「待てない社会」の産物なのか。