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【日本の議論】消費者庁なんていらない? (3/3ページ)
消費者庁ができれば、こうした事故を「重大事故」と判断した場合、是正勧告や命令など行政処分を出せるうえ、取引禁止や、回収させることも可能になる。
ただ、これにも問題がある。関連法案は、同庁が業者を処分できる条件を「重大事故等」の場合としているだけで、その定義を具体的に定めていない。消費者庁が処分を連発すれば、「国家権力の恣意的な運用」と批判が出ることや、業者側から行政訴訟を起こされることも予想される。準備室は「必要があれば訴訟を起こされるリスクは負っても規制する」としているが、もし裁判で敗訴すれば、そうした態度を貫けるか疑問が残る。
■“プレ消費者庁”の成果 問われるリーダーシップ
「制度に不備があるのは分かっている。しかし、これまで行政が対策を講じてこなかった消費者問題に取り組むためには、まず消費者庁を設立することが大事。その後、組織や法律を改良していけばいい」。消費者庁構想を推進してきた主婦連合会の佐野真理子事務局長は話す。各省庁からの評判は決して良くない消費者庁構想だが、消費者側の期待は高い。
すきま事案など、各省庁が対応できなかった問題に対応するため、消費者庁は消費者行政一般で政策立案や法案作成機能が与えられる。ただ、新設官庁である限り、そのための人材は結局、他省庁からの“拠出”に頼らなければならない。他省庁頼みは、ある意味で業者監視と変わらない。
特命担当相や長官を通じて消費者庁を直接指揮・監督できる首相が、ほかの大臣や省庁トップに対してリーダーシップをとれば、消費者庁の存在感も能力も上がる。しかし、そうでなければ「消費者庁は単に役所を増やして屋上屋をつくるもの。混乱を招くだけ」という批判は現実になる。
昨年9月、事故米の不正転売を見逃していた農水省が批判を浴びて、“機能不全”に陥ったことがあった。まさに消費者庁が必要とされるケースで、当時の福田康夫首相の指示を受け、事態収拾に乗り出した野田担当相は、内閣府のスタッフを中心にチームを立ち上げ、「プレ消費者庁」と位置づけた。
しかし、結果は芳しくなかった。野田担当相は、第三者委員会「有識者会議」(座長・但木敬一前検事総長)で問題を検証し、農水省幹部の処分には成功したが、そのほかの対策ではほとんどリーダーシップを発揮できなかった。プレ消費者庁は農水省や厚労省から情報を集めて、報道発表するだけ。農水省幹部はプレ消費者庁のことを「(報道発表文をまとめるだけの)ホチキスと呼ばれている」と皮肉っていた。
消費者庁ができても、こうした事態に陥るのでは意味がない。
各省庁が保身に走ったり、業界側の視点にのみとらわれたりした場合、改善を是正し、指示できるのか、率先して対策を示すことができるのか、消費者庁の是非はこうした点にかかっている。
法案は今年の通常国会で再び審議される見通し。民主党は、内閣から独立性の高い機関「消費者権利院」構想を掲げており、仮に与野党が新組織の設置で合意しても、政治からの独立を重視する消費者権利院になるのか、政治の下で政策立案や指導力を重視する消費者庁になるのか、審議の見通しは立っていない。





