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【経済が告げる】編集委員・田村秀男 100年に1度の大転換

2008.12.31 02:45

 年が改まる。100年に1度の「危機」というのを「大転換」と発想を変えてみよう。

 2年前に国内総生産(GDP)の3・5倍に膨れ上がった世界の金融資産がとてつもない購買力を創出したが、2008年には実に日米欧のGDP合計額を上回る資産があぶくとなって消えた。生産活動は機能不全に陥り、中国の出稼ぎ農民を中心に既に2000万人以上の、日本では8万5000人の非正規雇用者の職を奪った。

 震源地・米国の連邦準備制度理事会(FRB)は通常の数十年分ものドル札を刷っては不良金融資産を買い上げる。欧州も中国も追随。日銀も意を決して円札を刷り、企業の短期資金調達のための証書CP(コマーシャルペーパー)を買い取るところまできたが、まだ対症療法の域を出ない。

 カネ(金)は融(と)けて流れて「金融」となる。日本では国内の民間銀行の預金の4分の1、約130兆円が貸されない。借り手の企業も大不況に備え、CPと引き換えに得る日銀券の大半はそのまま手元に置く様子だ。主婦も経営者もカネを節約し、買い控える。このデフレは米欧でもっと深刻だ。

 氷河期に入った金融の流れを融かすためにはどうすればよいか。

 解は意外なところにある。金融バブルの元凶視されている「証券化商品」である。証券化商品とは、各種の債務を国債などのような売り買い自由な債券に作り替えたものだ。他のローンと組み合わせる。焦げ付きリスクが10%のローンを10件組み合わせると、この新証券化商品が単なる紙切れになるリスクは驚くことなかれ、100億分の1に縮小するというのが統計学上の計算である。であれば、焦げ付きリスクの高い低所得者向けの高金利型住宅ローン(サブプライムローン)だって、証券化の衣装を着せると見栄えする。それをてこに米国では爆発的な住宅ブームが出現した。担保となる住宅の価値が上がるから、焦げ付きリスクは解消し、米金融機関は住宅ローン証券を粗製乱造、世界の金融機関や投資家が争って買った。

 この証券化モデルの間違いは、もともと貧弱な返済能力の基盤を無視し、住宅価格の値上がりが未来永劫(えいごう)続くと錯覚したことだ。しかし、投資リスクを分散させる証券化という金融手法そのものは、画期的と言ってよいだろう。やみくもに規制強化し、封じ込めてしまえというのは短絡的すぎる。

 従来のような銀行融資主導の金融に戻せばよい、という意見もあるだろう。しかし、そうしたところで、第2、第3の「新銀行東京」が生まれるはずだ。今の銀行はリスクをかぎ分ける能力に乏しい。銀行融資が生産能力を爆発的に膨らませた自動車など、従来の産業を数年間で元通りにできるはずはない。質的転換しかないはずだ。

 住宅に限定しなくても、証券化にふさわしい事業はいくらでもある。オバマ新政権がブッシュ政策を百八十度転換させる地球環境関連は新需要の柱になる。風力発電、太陽電池、エコカーなどリスクの高い環境技術開発事業は証券化すれば低リスク金融商品が生まれる。農業分野では「食の危険」を払拭(ふっしょく)させようという消費者のニーズが新市場を創出する。有機農業事業を作物ごとに組み合わせて証券化すれば、余剰資金を引き付けられる。呼び水となる投資資金には、それこそ政府の「埋蔵金」を投入すればよい。証券化手法の活用により、大小無数の新規事業を興そうではないか。

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