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【正論】金融危機の「工学的」落とし穴 同志社大学教授・三木光範 (1/3ページ)

2008.10.31 03:50
このニュースのトピックス正論

リスクと利益の相互関係

 米国のサブプライムローン(低所得者向け高金利型住宅ローン)問題をきっかけに始まった世界の金融収縮により、多くの国での経済が危機に陥っている。こうした危機の発生には、いわゆる金融工学にもその原因があろう。

 金融工学で最も重要な概念はリスクマネジメントである。リスクとは、投資したお金に関する損失であり、マネジメントとは、基本となる理論と多くのデータから結果を推定し、損失を少なくする方法を考えることである。

 大きな利益を得るためにはリスクはつきものである。かつて、イギリスが東インド会社を設立した時代には、投資家たちがインドに航海する船を購入し、命知らずの乗組員を雇って、お茶、香辛料や綿製品などをヨーロッパに持ち帰った。それが莫大(ばくだい)な利益を生む投資となった。

 しかし、東方へ向かう航路を往復する船は、途中で嵐や海賊に出合い、船がイギリスに戻ったときには、乗組員の80%以上が亡くなることもあった。まさに大きなリスクだが、うまくいけば、それだけの儲(もう)けがついてくる。リターンが大きいほど、リスクも大きくなるわけだ。

 リスク、すなわち、投資したお金が戻ってこない可能性を金融工学を用いて解析し、そのリスクに見合うリターンが得られるなら、投資は妥当であると考えられる。

少数の事象では役立たず

 こうした投資案件を多数ミックスし、リスクを負ったときの損失補填(ほてん)などのメカニズムを加え、少なくとも「数学的には」妥当な金融商品が世界中で販売されている。

 しかし、この金融工学には仮定が多い。ボラティリティー(価格変動の比率)が一定であるとか、市場は効率的(すべての情報は金融市場に反映される)であるなどの仮定である。これらの仮定は、長期的には正しいかもしれないが、短期的に当てはまるかどうかは疑問である。また、多数の投資案件に関する総合的なリスクの算出は極めて困難でもある。

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